質料と形相
第8週 第6日(土)
アリストテレスの質量と形相に関する理論は、彼の哲学思想のうち最も重要で最も影響を残したものの一つだ。
しかし、わかりにくい説であったため、正しく理解されないことも多い。
端的に言えば、この節は近代科学がまだ成立していない時代に自然現象を説明しようとしたものだった。
アリストテレス(紀元前384~前322)は、世界は実体(植物や動物など、具体的な個々の事物)で構成されていると考えていた。
わかりにくければ、実体とは、それについて語るときの分の主語になるものだと考えればよい。
例えば、「ソクラテスは青白い」と言えるので、ソクラテスは実体である。
アリストテレスは、実体が持つ性質のうち、「青白い」など一部の性質を「偶有性」と呼んだ。
偶有性とは、実体について語られる事柄のことで、分では普通形容詞として機能する。
ソクラテスが生きている状態から死へと変わるような、実体の変化という考えから生まれたのが、アリストテレスの質量と形相の理論だ。
ソクラテスが死んでも、その死体は存在し続ける。
アリストテレスは実体が変化しても存在するものを「素材」という意味で、「質料」と呼んだ。
しかしソクラテスの質料は、以前は多様な複雑な生命活動を行っていたが、そうした活動をすべて止めてしまった。
死んだ後は質料は残るが、質料の形は変化している。
このように質料に一定の形を与え、ソクラテスの各部分がどのように相互作用するかを決める構成原理・活動原理のことを「形相」という。
アリストテレスは、個々の実体は質料と形相を組み合わせたものだと考えた。
そして自然哲学についての著書で、この質料と形相の理論を使って多種多様案自然現象を説明した。
目の前で起こる現象を現在知られている知識を使って説明する、質料と形相の理論こそ哲学っぽいなと。
当時の自然現象はなぜそれが起こるのかわからないが、こういう理論を与えることによって、納得できるような状況を作ったのだろう。
もうちょっと具体的にどういう事柄をこの理論を使って説明したのか気になるけど、そこは今後の楽しみにとっておこう